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未完成の美
 

良く晴れた秋の休日、信州の鎌倉と言われる塩田平-別所温泉に出向いた。この地区は鎌倉時代に創られた古い寺院が多く残っている場所で、これらは比較的近くに点在しているため歩いて拝観でき、のんびり散策するにはもってこいの場所。私の好きな場所のひとつ-そして全国「遊歩百選」認定コースにも選ばれているらしい。
この写真は「前山寺-ぜんさんじ」の三重の塔。室町時代の塔だと言われているが面白いところはこの塔が未完成であること。2層、3層部には窓も廻り縁も無く、柱からは貫が突き出たまま。しかし美しい。この塔を前に、かなりの時間じ〜としていたので他の見学者から怪しい目で見られたかもしれない。ヨーロッパの教会建築でも資金難で工事が中断されてから何百年と放置された後、再び完成に向けて工事を始めることもしばしばあるが、こちらは木造なのでかなり難しいのだろう。これはこのままが美しいのだと思う。そして隣の銀杏の木がこの塔を更に美しく引き立てている。恐らく現代の新建材を使った建築物が途中で工事を中断し、放置されてしまえばただの廃墟にしか見えないと思う。やはり美しさを保つには周りの自然と調和が取れないといけない。それは新建材のように経年変化が無く、無表情な材料は不適切なのだと思う。最近住宅では新建材が手入れも簡単で比較的安く手に入るため多く使われている。しかし手入れが簡単ということは、住まいに無関心ともいえるのでは。と考えてしまう。携帯電話やメールに時間を掛けるより、住まいに手間隙を掛けた方がより人間らしいと思うのだが。
と考えさせられた風景でした。



 
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